「One Medicine」の視座のもと医薬品開発の成功率を高めるだけでなく、「Sharing Medicine」という新たな学術領域を開拓したい
わが国ではスタチンや免疫チェックポイント阻害薬、寄生虫駆虫薬など世界の医療を革新する医薬品を過去には創出してきました。しかし、新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に対して、わが国はワクチン・治療薬の創出で世界に大幅な後れをとりました。さらにライフサイエンス分野における研究力低下が創薬研究に深刻な影を落としつつあり、創薬研究におけるわが国のプレゼンス維持は今後きわめて困難といえます。このような現状を打破するには、膨大な資金と労力を要する創薬研究の仕組みを変革する必要があります。
わが国では、創薬プロセスにおいて橋渡し研究や臨床研究を実施する仕組みは整備されつつあるものの、基礎研究の果実から開発される創薬シーズの安全性や有効性を評価する非臨床試験、治験における成功率を飛躍的に向上させる必要があります。
そこで「ヒトと動物の疾病は共通」、すなわち「One Medicine」という視座にたち、1)構造生物学や細胞・再生医学、インフォマティクスにもとづくシーズの開発・展開、2)比較医学にもとづく疾患モデル動物や量子技術、AIを駆使した先端医療機器によるシーズの育成、3)医学、獣医学、薬学、工学の研究者が分野横断的かつ国内外で施設横断的に連携し、有望な創薬シーズを高度に選別し、非臨床試験、治験・臨床試験につなげる体制づくりが喫緊の課題となっています。さらには、創薬標的同定から創薬シーズの開発・育成、非臨床試験、治験・臨床試験までの研究プロセスを一気通貫で管理・推進し、医薬品・医療機器開発企業との共同研究や知財導出を支援できる人材を育成し、国内の大学・研究機関に配置することで、創薬研究を一気に加速させる必要があります。
本拠点では、「One Medicine」の視座のもと国際的にわが国が後れをとる医薬品開発の成功率を高めるだけでなく、「Sharing Medicine(人獣共通医療学)」という新たな学術領域を開拓してまいります。
拠点長 秋山 治彦