Objectives

目的

医学、獣医学、薬学、工学等の研究者が分野横断的に連携し、
ヒトと動物の創薬研究を変革します。

わが国ではスタチンや免疫チェックポイント阻害薬、寄生虫駆虫薬など世界の医療を革新する医薬品を過去には創出してきました。しかし、今般のライフサイエンス分野における研究力低下を背景に、新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に対してワクチン・治療薬の創出で世界に大幅な後れをとりました。このような現状を打破するには、基礎研究をもとに臨床応用に向け、成功率の高い創薬シーズの開発・育成の体制構築が急務です。

また、伴侶動物に対する医療の高度化を背景に動物用医薬品開発の必要性が高まっているにもかかわらず、ヒト医薬品に比べ市場規模が小さいことが主な制約となり、動物用医薬品開発が十分に進んでいません。このような背景から動物医療の現場では、ヒト医薬品の動物への流用、ヒト医薬品として承認されなかった医薬品の動物用医薬品としての承認が散見されます。このような状況を打開するため、ヒト用医薬品開発と連動した動物用医薬品の開発の必要性が強く認識されています。

そこで本拠点では、「ヒトと動物の疾病は共通」、すなわち「One Medicine」という視座にたち、医学-獣医学の境界を越えた新たな学際領域を開拓します。そして、医学、獣医学、薬学、工学等の研究者が分野横断的かつ国内外で施設横断的に連携し、有望な創薬シーズを高度に選別し、治験につなげることでヒトと動物の創薬研究を変革します。

さらには、創薬標的同定から創薬シーズの開発・育成、非臨床試験、治験までの研究プロセスを一気通貫で管理・推進し、医薬品・医療機器開発企業との共同研究や知財導出を支援できる人材を育成し、国内の大学・研究機関に配置し、オールジャパン体制でヒトと動物の創薬研究を一気に加速させ、「Sharing Medicine(人獣共通医療学)」という新領域を開拓してまいります。

Research

研究内容

創薬シーズの臨床応用には、ヒトにおける治験に先駆け、国が定めた基準で実験動物を対象に非臨床試験を実施し、安全性を評価する必要があります。しかし、非臨床試験で得られる安全性情報のヒトへの外挿可能性は不確実であり、ヒト疾患に対して期待される有効性も十分に評価できないため、特定の創薬シーズの臨床応用の成功確率を非臨床試験や治験以前に予測することが困難であり、いわゆる創薬研究における「魔の川」が存在します。

拠点では、「ヒトと動物の疾病は共通」、すなわち「One Medicine」という視座にたち、比較医学に基づくオーダーメイド型疾患モデル動物を強みとして、構造生物学や細胞・再生医学、インフォマティクスにもとづき核酸から蛋白質、細胞、人工マテリアルまで多様なモダリティによる創薬シーズを開発・展開し、量子技術、AIを駆使した先端医療機器によるシーズの育成することで、創薬研究における「魔の川」を克服しうる、成功率の高い有望な創薬シーズを開発・育成していきます。詳しくは、研究内容をご覧ください。

Organization

組織について

本拠点では、岐阜大学の医学系研究科、共同獣医学研究科、連合創薬医療情報研究科、工学研究科等の現状組織の一部を再編し、名古屋大学の環境医学研究所、創薬科学研究科、医学系研究科、理学研究科、トランスフォーマティブ生命分子研究所の教員からなる新たな組織や岐阜薬科大学との強力な連携体制のもと、医・獣・薬・工学等の異分野の研究者が有機的につながり、創薬研究における「魔の川」の克服を目指します。

本拠点には、AIを利用したデータサイエンスによるヒトと動物の比較データ解析を担うデータサイエンス部門、比較医学に基づく疾患モデル動物の開発を担う動物医科学研究開発部門、医薬品シーズの開発・育成を担う革新的モダリティ創出部門、医療機器開発を担う先端医療機器開発部門の4部門を設置しています。

さらに、リサーチマネジメント室がこれら部門間の連携を促進し、迅速な創薬シーズの開発・育成と企業導出や知財・大型予算獲得等の支援を行っております。

International collaboration

国際性

拠点は、世界のライフサイエンス研究の拠点機関や製薬・医療機器開発企業と連携し、研究交流、人材交流を通して、世界トップレベルのトランスレーショナルリサーチを実践し、ヒトと動物の創薬・先端医学研究の発信を目指します。国際交流により、「One Medicine」という視座のもと、医学-獣医学の境界を越えた新たな学際領域「Sharing Medicine(人獣共通医療学)」の開拓と国際力の高い若手研究者の育成が期待できます。