早期膀胱がんの悪性進展を抑える新しい核酸医薬を開発
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学の平島一輝 G-YLC特任助教(高等研究院・大学院連合創薬医療情報研究科・One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター/COMIT)、赤尾幸博特任 教授(大学院連合創薬医療情報研究科)の研究グループは、悪性に進展しやすい早期膀胱がんの性質を反映した動物モデルを確立し、マイクロRNA-145(miR-145)という小分子RNAの低下が早期膀胱がんの発生・進展のトリガーになっていることを明らかにしました。また、miR-145の化学構造を改変して抗がん活性を向上させた核酸医薬 2)(miR-145-S1)を開発し、早期膀胱がんモデルに膀胱内投与すると病変の悪性進展が抑えられることを実証しました。miR-145-S1は早期膀胱がんの悪性進展を抑える新たな核酸医薬シーズとして今後の開発が期待されます。また、本研究で確立した動物モデルを応用することで、今後の早期膀胱がんの治療研究開発がさらに加速化すると考えられます。
本研究成果は、日本時間2023年7月3日14時00分にMolecular Therapy Nucleic Acids誌(Impact Factor 10.183、創薬分野の国際雑誌のうち引用率8位/155雑誌)のオンライン版で発表されました。
【研究成果のポイント】
・膀胱がんの多くは早期に発見され内視鏡切除されますが、再発し悪性進展しやすいことが問題です。
・研究チームは、悪性に進展しやすい早期膀胱がんの性質を反映した動物モデルを確立し詳細に検証したところ、マイクロRNA-145(miR-145)1)という小分子RNAの低下が早期膀胱がんの発生・進展のトリガーになっていることを明らかにしました。
・miR-145の二本鎖化学構造を改変して抗がん活性を向上させた核酸医薬(miR-145-S1)を開発し早期膀胱がんモデルに投与したところ、病変の悪性進展が抑えられることを実証しました。
・miR-145-S1は早期膀胱がんの悪性進展を抑える新たな核酸医薬シーズとして今後の開発が期待されます。
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書誌情報
雑誌名 | Molecular Therapy Nucleic Acids |
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論文タイトル | Targeting microRNA-145-mediated progressive phenotypes of early bladder cancer in a molecularly defined in vivo model |
著者 | Kazuki Heishima, Nobuhiko Sugito, Chikara Abe, Akihiro Hirata, Hiroki Sakai, and Yukihiro Akao |
DOI | 10.1016/j.omtn.2023.06.009 |