研究成果

酸化反応によって溶けた後、ひとりでにもう一度固まる不思議なゼリー状物質を発見!

 岐阜大学工学部化学・生命工学科の池田 将 教授、岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科 新谷 勇喜 (博士課程2年) さんらの研究グループは、山形大学 大学院有機材料システム研究科の片桐 洋史 教授との共同研究で、アミノ酸誘導体型分子からなる新たな水系のゼリー状物質を作り出しました。

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Back Coverに選ばれたCG
(Copyright 2024 Wiley-VCH.)

さらに、得られたゼリー状物質が、酸化反応によって溶けて水溶液状態になった後、自発的にもう一度ゼリー状態に戻るという珍しい現象を発見しました。このようなゼリー状物質の内部には、抗体などのバイオ医薬品や細胞を包埋できることが知られており、新たな医療用材料としての応用開拓が期待されます。

 本研究成果は、世界最大の出版社のひとつであるWiley-VCH刊行の学術雑誌「Advanced Functional Materials」に、日本時間2024年2月13日にオンライン版 (Open Access) で発表されました。
 また、本研究成果をCG (Computer Graphics)で表現したイラスト(右イラスト)が、Back Coverに選ばれ、6月19日に出版されました。なお、CGは本研究内容と岐阜に縁のあるイメージ案を元に、サイエンス・グラフィックス株式会社 辻野 貴志氏 によって制作されました。

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研究概要 アミノ酸誘導体 (Fmoc-CBzl) は水溶液中で自己集合してナノファイバーネットワークを形成することでゼリー状物質 (ゲル) を形成します。本研究では、このゼリー状物質が酸化反応によって溶けた後、もう一度ゼリー状態に戻るという珍しい現象を発見しました。

発表のポイント

  • 水を固めてゼリー状物質を形成するアミノ酸誘導体型分子を見つけました。
  • 開発したゼリー状物質が、酸化反応によって溶けて水溶液状態になった後、しばらくすると、もう一度ゼリー状態に戻るという珍しい現象を発見しました。
  • ゼリー状物質が酸化に応答するメカニズムを分子構造およびナノ構造体の変化から解き明かしました。

詳しい研究内容について

 酸化反応によって溶けた後、ひとりでにもう一度固まる不思議なゼリー状物質を発見!

 本研究の一部は、日本学術振興会 科学研究費補助金 (基盤研究(B) No. 23H01815)、東海国立大学機構 融合フロンティア次世代リサーチャー事業・メイク・ニュー・スタンダード次世代研究事業 (国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「次世代研究者挑戦的研究プログラム」) の支援を受けて行われました。論文のオープンアクセス化に関して本学図書館の支援を受けました。

論文情報

  • 雑誌名:Advanced Functional Materials, 2024,34,202312999
  • 論文名:Oxidation-Responsive Supramolecular Hydrogel Based on a Simple Fmoc-Cysteine Derivative Capable of Showing Autonomous Gel-sol-gel Transitions
  • 著 者:Yuki Shintani, Hiroshi Katagiri*, Masato Ikeda*
  • DOI: 10.1002/adfm.202312999