肥満の過程で脂肪組織は大きく構造変化する
~細胞種間の相互作用により脂肪組織機能を制御する分子を発見~
名古屋大学環境医学研究所/大学院医学系研究科の神田 容 博士後期課程学生、田中 都 講師、菅波 孝祥 教授を中心とする研究グループは、最新の1細胞解析技術を駆使して脂肪組織に存在するマクロファージと線維芽細胞の相互作用を解析し、両者の間で肥満に伴って変化する特徴的なシグナルを見出しました。
過栄養や運動不足は肥満(=余剰エネルギーを蓄積する体脂肪量が増加した状態)をもたらし、さまざまな生活習慣病の発症原因となります。この時、脂肪細胞のサイズの増大(肥大化)や細胞数の増加に加えて、免疫細胞や線維芽細胞など多彩な細胞種の変化が報告されていましたが、これらがどのように相互作用して脂肪組織全体の機能を制御するかは不明でした。
今回、研究グループは、シングルセルRNAシーケンス解析および空間トランスクリプトーム解析という最新の1細胞解析技術を駆使して、肥満の過程で脂肪組織を構成する細胞がどのように変化するかを時間軸に沿って解析しました。その結果、コラーゲンが過剰に蓄積(線維化)する進行した肥満では、免疫細胞と線維芽細胞が特徴的なシグナルで相互作用していることを明らかにしました。特に、線維化の起点となる特徴的なマクロファージ亜集団がコラーゲンの量や質を変化させて脂肪組織全体の機能を制御するという新たな分子機序を見出しました。
本研究成果は、2025年3月11日付で米国科学雑誌『Diabetes』のオンライン版に掲載されました。
【研究成果のポイント】
・最新の1細胞解析技術を用いて、過栄養が肥満をもたらす過程で脂肪組織を構成する細胞の種類がダイナミックに変化することを見出した。
・コラーゲンが過剰に蓄積(線維化)する進行した肥満では、免疫細胞と線維芽細胞が特徴的なシグナルで相互作用していることを明らかにした。
・特に、線維化の起点となる特徴的なマクロファージ亜集団がコラーゲンの量や質を変化させて脂肪組織全体の機能を制御するという新たな分子機序を見出した。
詳しい研究成果(和文)はこちら
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書誌情報
雑誌名 | Diabetes |
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論文タイトル |
Septin 3 regulates memory and L-LTP-dependent extension of endoplasmic reticulum into spines |
著者 |
Hiro Kohda, Miyako Tanaka, Shigeyuki Shichino, Satoko Arakawa, Tadasuke Komori, Ayaka Ito, Eri Wada, Kozue Ochi, Xunmei Yuan, Takehiko Takeda, Atsuhito Saiki, Ichiro Tatsuno, Kenji Ikeda, Yuki Miyai, Atsushi Enomoto, Yoshihiro Morikawa, Shigeomi Shimizu, Satoshi Ueha, Kouji Matsushima, Yoshihiro Ogawa, Takayoshi Suganami |
DOI | 10.2337/db24-0762 |