LGI1-ADAM22/23経路の破綻は海馬原性のてんかん性脳症を引き起こす
~国際多機関共同研究により病態解明~
名古屋大学大学院医学系研究科 神経情報薬理学の深田正紀 教授、分子細胞薬理学の深田優子 准教授、東京大学大学院医学系研究科の平野瑶子 大学院生らの研究グループは、東京大学薬学系研究科の池谷裕二 教授、自然科学研究機構生理学研究所の稲橋宏樹 技術職員、および7ヶ国の遺伝学者、臨床医との共同研究により、“LGI1–ADAM22/23関連疾患スペクトラム”という新しい脳疾患カテゴリーを提案し、その分子、神経回路および個体における病態メカニズムを解明しました。
近年のヒト全ゲノムシーケンス解析やヒトエクソーム解析の普及により、新規の遺伝子バリアント(変異)が次々と報告されていますが、それらの多くの病態メカニズムは未だ十分に明らかにされていません。これまでに本研究グループは、常染色体顕性てんかんの原因遺伝子として報告されていた分泌タンパク質LGI1とその受容体ADAM22/23の研究を進め、LGI1-ADAM22/23複合体が神経細胞のシナプス伝達や可塑性、興奮性制御に重要な役割を果たしていることを報告してきました。本研究では、国際多機関共同研究を通じて、最初のLGI1とADAM23の両アレル性バリアント(変異)を有する「発達性てんかん性脳症患者」を見出しました。これらLGI1バリアントの分泌レベルを高精度に測定したところ、残存するLGI1機能と患者の臨床症状の重篤度の間に高い相関性があることが明らかになりました。また、Lgi1欠損マウスの電気生理学的解析から、てんかんの焦点は海馬原性であることを突き止めました。さらに、LGI1-ADAM22/23経路が破綻したマウスの行動学的解析により、LGI1-ADAM22/23経路の破綻は、てんかん発作以外に認知機能障害も引きおこすことを見出しました。
これらの発見は、 “LGI1–ADAM22/23関連疾患スペクトラム”という新しい脳疾患分類を提案し、その病態メカニズムを明らかにした点で重要であると共に、多くの国際機関との共同研究の成果としても意義深いと言えます。
本研究成果は、2025年8月6日付国際科学雑誌『Brain』誌に掲載されました。
【研究成果のポイント】
・ 国際共同研究を通じて、はじめてのLGI1およびADAM23の両アレル性バリアントを有する発達性てんかん性脳症患者を見出した。
・LGI1両アレル性バリアントを有する患者は、残存するLGI1機能に応じて軽微な行動異常から致死性てんかん発作まで広汎な症状を示すことを見出した。
・Lgi1欠損マウスの解析から、てんかんの焦点は海馬原性であることを突き止めた。
・LGI1-ADAM22/23経路が破綻したマウスの行動解析から、この経路の破綻は、てんかん以外に高次脳機能障害も引きおこすことを見出した。
詳しい研究成果(和文)はこちら
書誌情報
| 雑誌名 |
Brain |
|---|---|
| 論文タイトル |
Biallelic LGI1 and ADAM23 variants cause hippocampal epileptic encephalopathy via the LGI1–ADAM22/23 pathway |
| 著者 |
Yoko Hirano, Yuri Miyazaki, Daisuke Ishikawa, Hiroki Inahashi, Zuhair Nasser Al-Hassnan, Giovanni Zifarelli, Peter Bauer, Javeria Raza Alvi, Tipu Sultan, Michelle L. Thompson, Abdullah Sezer, Bahadır Konuşkan, Razan S. Hajir, Ayman W. El-Hattab, Stephanie Efthymiou, Ayuki Ishida, Norihiko Yokoi, Hans-Christian Kornau, Dietmar Schmitz, Harald Prüss, Henry Houlden, Yuji Ikegaya, Yuko Fukata,† Masaki Fukata† Reza Maroofian† |
| DOI | 10.1093/brain/awaf202 |
