高血糖時に膵β細胞を増やす分子スイッチを発見
ー糖尿病で失われる膵β細胞量回復へつながる新たな治療標的ー
ダイアベティス(糖尿病)の発症予防や進行抑制には、インスリンを分泌する膵β細胞の量を維持・回復することが重要です。しかし、成人では膵β細胞の再生能力は限られており、その増殖を制御する分子機構の全容は未だ明らかではありません。
今回、岐阜大学、関西電力医学研究所、藤田医科大学、京都大学の共同研究グループは、グルコースに応答して活性化する転写因子 ChREBP(Carbohydrate ResponsiveElement Binding Protein) に着目しました。膵β細胞特異的にChREBPを欠損させたマウスを作製し、さまざまな代謝環境における膵β細胞増殖への影響を解析しました。
その結果、強いインスリン抵抗性と高血糖を人工的に誘導する薬剤 S961 の投与による高度な高血糖・インスリン抵抗性状態、および高脂肪食による耐糖能障害・肥満状態において、ChREBP欠損は膵β細胞増殖を著しく抑制しました。一方、妊娠による生理的インスリン抵抗性では、膵β細胞増殖は保たれていました。さらにRNAシーケンシングによる遺伝子発現解析から、ChREBPの標的遺伝子である Rgs16 が高血糖下で誘導
され、膵β細胞増殖に関与する可能性が示されました。
本研究は、ChREBPが代謝ストレスに応じて膵β細胞増殖を制御することを示したものであり、2型のダイアベティス(糖尿病)における膵β細胞量保護を目指す新たな治療標的につながる成果です。本研究成果は、日本時間2026年4月15日に国際学術誌「Journal of Diabetes Investigation」オンライン版に掲載されました。
本研究の成果のまとめ
【研究成果のポイント】
• 血糖上昇を伴うインスリン抵抗性下では、ChREBP 欠損により膵β細胞増殖が著しく低下しました。
• 一方、血糖上昇を伴わない妊娠時の膵β細胞増殖には、ChREBPの欠損による影響は認められませんでした。
• 増殖中の膵β細胞の遺伝子発現解析から、ChREBP下流分子Rgs16が膵β細胞増殖を促進する可能性を見いだしました。
詳しい研究成果(和文)はこちら
書誌情報
| 雑誌名 |
Journal of Diabetes Investigation |
|---|---|
| 論文タイトル |
ChREBP drives β-cell proliferation under metabolic stress |
| 著者 |
Sodai Kubota※, Seiya Banno, Katsumi Iizuka, Hiromi Tsuchida, Saki Kubota-Okamoto, Teruaki Sakurai, Yoshihiro Takahashi, Toshinori Imaizumi, Takehiro Kato, Yukio Horikawa, Shin Tsunekawa, Ryota Usui, |
| DOI | 10.1111/jdi.70295 |

