研究成果

関節炎を抑える新たな化合物を発見
— 炎症に関わる酵素「ナルディライジン」の働きを止める初の低分子化合物 ―

 国立大学法人滋賀医科大学 薬理学講座の西 清人 助教、西 英一郎 教授、整形外科学講座の天野 泰孝 助教(研究当時)、今井 晋二 教授らの研究グループは、岐阜薬科大学 生化学研究室の河野 真也 大学院生、五十里 彰 教授、国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学大学院 連合創薬医療情報研究科の遠藤 智史 准教授、京都大学、神戸学院大学との共同研究により、酵素「ナルディライジン(NRDC)」の働きを抑える化合物「R5-1」を発見しました。

 NRDCは、タンパク質を切断する「はさみ」のような酵素(プロテアーゼ)で、細胞の核の中では遺伝子のスイッチ(転写)の調節にも関わっています。これまでの研究で、NRDCをもたないマウスでは関節炎やがんが起こりにくいことが分かっており、NRDCは新しい治療の標的として注目されてきました。しかし、NRDCの働きを薬で抑える手段(阻害剤)はこれまで存在せず、「薬で狙える標的なのか」を確かめることができませんでした。

 本研究グループは、NRDCの「はさみ」の働きを光の強さで測る方法を確立し、理化学研究所の協力のもと、約3万3千種類の化合物から、NRDCの働きを抑えるものを探索しました(ハイスループットスクリーニング)。段階的な絞り込みの結果、R5-1を最有力候補として選び出しました。R5-1は、細胞の中でNRDCによる遺伝子スイッチの調節を打ち消し、さらに関節リウマチのモデルマウスに投与すると、関節の腫れなどの症状を有意に軽減しました。

 本成果は、NRDCが薬の標的にできる分子であることを示すものです。今後、R5-1を出発点として改良を重ねることで、関節リウマチなど炎症性疾患の新しい治療薬の開発につながることが期待されます(図)。

 本研究成果は、2026年9月9日付けで国際学術誌 Biochemical Pharmacology にオンライン掲載されました。

本研究の概要図

【研究成果のポイント】

・炎症やがんなどに関わる酵素「ナルディライジン(NRDC)」の働きを抑える化合物「R5-1」を、約3万3千種類の化合物の中から発見しました。NRDCを標的とする低分子化合物の報告は世界で初めてです。

・ R5-1は、酵素がタンパク質を切る「刃」の部分ではなく、そこから離れた場所に結合して働きを鈍らせる、珍しいタイプの阻害剤であることが示唆されました。

・関節リウマチのモデルマウスにR5-1を投与すると、関節の腫れなどの症状が有意に軽減しました。関節リウマチなど炎症性疾患の新しい治療薬開発の出発点となることが期待されます。

 

詳しい研究成果(和文)はこちら




書誌情報

雑誌名

Biochemical Pharmacology

論文タイトル

Identification of a small-molecule inhibitor of nardilysin and its pharmacological effects on transcriptional regulation and inflammatory arthritis

著者

Yasutaka Amano, Kiyoto Nishi, Hazuki Sano, Shinya Kawano, Satoshi Endo, Mikiko Ohno, Akio Shimizu, Shinya Ikeda, Yusuke Morita, Jiro Sakamoto, Yoshinori Hiraoka, Akira Ikari, Taku Kawasaki, Shinji Imai, Eiichiro Nishi

DOI 10.1016/j.bcp.2026.118456