研究成果

ALS病因となる異常タンパク質の新たな除去経路を発見
~TBK1を起点とする「細胞の防御機構」が治療標的となる可能性~

 名古屋大学環境医学研究所病態神経科学分野の酒井 昭平 特任助教、山中 宏二 教授らの研究グループは、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学の井口 洋平 講師、勝野 雅央 教授、英国キングスカレッジロンドンのジェミーン・スリードラン シニアリサーチフェローらとの国際共同研究で、ALSの運動神経細胞で異常蓄積する病因タンパク質TDP-43を分解除去する新規経路として、TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路が存在することを明らかにしました。

 ALSは運動神経細胞が選択的に変性(細胞死)する根本的治療法が確立されていない神経難病です。運動神経細胞におけるTDP-43タンパク質の異常蓄積が発症要因の一つと考えられていますが、ALSにおいてTDP-43が正常に分解除去されず細胞内に蓄積するメカニズムの詳細は明らかになっていません。

 本研究では、まずALS原因遺伝子産物の一つであるTBK1タンパク質が異常凝集性TDP-43と細胞内で物理的に相互作用することで活性化することを見出しました。次に活性化したTBK1はサイトカインIFNβを介して免疫プロテアソームと呼ばれる特殊なプロテアソーム複合体を誘導し、凝集性の高い単量体型TDP-43を分解除去する分子機構が存在することを明らかにしました。ALS患者由来TBK1変異体では十分にIFNβができず、また、ALS患者の運動神経細胞ではIFNβ受容体の発現が低下していたことから、TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路の不全がALSにおけるTDP-43異常凝集メカニズムの一端である可能性が示唆されました。

 本研究成果は、2026年10月5日付で欧州分子生物学機構(EMBO)が刊行する国際科学誌『EMBO Reports』に掲載されました。

本研究の概要図

【研究成果のポイント】

・ALSの運動神経細胞で異常蓄積する病因タンパク質TDP-43を分解除去する新たな経路として、TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路を同定した。

・ ALS患者由来TBK1変異体はIFNβを正常に誘導できず、また、ALS患者の運動神経細胞ではIFNβ受容体の発現低下が認められた。

・TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路の不全がALSにおけるTDP-43異常凝集メカニズムの一端である可能性が示唆された。

 

詳しい研究成果(和文)はこちら




書誌情報

雑誌名

EMBO Reports

論文タイトル

TBK1 eliminates aggregation-prone monomeric TDP-43 through an IFNβ-immunoproteasome pathway in ALS models

著者

Shohei Sakai, Kotaro Oiwa, Yohei Iguchi, Izzet Mehmet Akcay, Seiji Watanabe, Okiru Komine, Noriko Nagata, Mai Horiuchi, Jemeen Sreedharan, Masahisa Katsuno, Koji Yamanaka

DOI 10.1038/s44319-026-00953-8